☆☆☆ 決勝日レポート ☆☆☆

 タイムトライアル ( T.T )

 さて、二日間の練習の成果が問われる決勝日がやって来た。
 なんといっても全日本選手権だ、いやがおうにも気合いが入る。

 日曜日の朝は、6時半のゲートオプンに合わせて出発。疲れた体をたたき起こして(でもカートの日は不思議と早起きできるものだ)サーキットに向かう。決勝日の流れは、まず各クラス15分間のフリー走行(ウオームアップともいう)、そして各自2ラップの計測タイムで行われるT.Tが行われ、その後10ラップの予選ヒートを2回行った後決勝レースとなる。

 フリー走行で各部のチェックとT.T用新品タイヤの皮むきを行って、いよいよタイトラだ。しかしここでちょっと問題が発生した。大島のエンジンの調子がおかしい。キャブセットが合わない感じで、まず最初にキャブの不調を疑ってみた。ところがキャブテスターでの確認をすると正常値を示している。謎の不調だ。とりあえず、昨夜交換したキャブの内部パーツを昨日まで使っていたものと交換して様子を見ることにした。

 タイムトライアルは、まずICAクラスのゼッケンの若い順に行われる。澤田のゼッケンは49番。最後の方のアタックだ。しかし、ここで澤田も「キャブの付きが悪い(いわゆる立ち上がりの反応が悪い)」現象が突然出て今一つのタイム41秒7。19番手という、予想よりもかなり悪いタイムとなってしまった。 でも、当初予定していたほどはトップチームのタイムも伸びていない。コンディションが昨日とは変わっていているのが早くも理解できた。

 次に行われたのがFAクラス。
 大島のゼッケンは58番。いよいよコースインだ。ところが、コースに入ってすぐに「あっ、大島の様子がおかしい!」。加速しないのだ。必死にキャブニードルを調整して、2周のアタックを敢行する大島だったが、最後までエンジンは生き返らず、不本意な「53秒台」という信じられない事態となった。もちろん順位も最下位だ。

 澤田も大島も「昨日までの好調さがウソのよう」にハマッてしまっていた。


 決勝朝の大島号。BirelのR31-X

 この時はまだ、この後起こる「悪夢」を想像するものはなかった。

 一緒に写っているのが、大島号メカ長の斉藤君。大島の弟子とも言える優秀なメカだ。


 予選ヒート

 ひっ迫したレース進行で行われるレース日に、何か問題が起きたときの対処法は「すぐに悪いイメージは捨て、前向きに対処をどんどん進めること」だ。実際、T.Tでは予想外の事態となった我々だったが、すぐに頭を切り替えて「予選で前に出ていきつつ、セットを進めて決勝で結果を出そう」という考え方に変えた。全日本だから、そんなに甘くはないのは承知しているが、しかし、全日本の舞台で「ごぼう抜き」して上がっていくドライバーも少なくはないのだ。

 愕然とするような事態となった大島のもとにはエンジンチューナーの酒井さんが直々にパドックに来てくれて、各種の対策を施した。プラグを新しいものと換え、キャブセットを確認し、電気系の確認も行った。昨日の調子に戻れば下位からの追い上げは十分に可能だ。昨日の感触としては「抜きたいところでパワーが出ていて、オーバーテイクが面白いように可能」だったからだ。そこで、決勝まで温存することを考えていた「調子のいい」エースエンジンであるPCRを予選第一ヒートから投入し、復活を期すこととした。なりふり構ってはいられないのである。

 澤田は「ま、キャブはエンジンが温まればだいじょうぶ、昨日も同じような症状があったからね。」と楽観している。チームリーダーとしては大島の状態回復に集中していこうということもあった。

 このころから会場の気温は急上昇、アスファルトに囲まれたパドックは体感気温で35℃以上はあったとおもう。日差しも強く、高い気温と相まって体力を奪っていく。同時に、パドック内での「ガソリンの管理」が大切になってきた。ガソリンは揮発性が非常に高いため、あまり日光に当てたりすると「燃料が腐る」のだ。腐ったガソリンは爆発力が落ち、レースには使えたもんじゃない。

 それから、ICA→FA→FSA→ICA→FA・・・・と続くスケジュールは忙しく、走行が終わりちょっと休むとすぐまたコースインだ。こういう暑い日に、このスケジュール。エンジンやキャブをしっかり冷まさないと性能低下を招く。各チーム冷却ファンを使用してエンジンの冷却に余念が無い。暑さに弱い北海道勢。結構効いてきました。

 

 澤田はジャンプアップ成功!

 さあ、予選第一ヒートだ。澤田は19番手からのスタート。ここでうまく前に出て楽な展開に持ち込みたいところだ。フォーメーションラップからきれいにスタート。1周目の最終コーナーでクラッシュが発生し「今回の本命」と目されていた赤坂の小山や、ランキング2位の松本らが脱落していく。そんな中、澤田は順調に順位を上げ、第一ヒートを11位で終了した。まずまずというところか。第2ヒートで一ケタ順位に上がれれば決勝レースが楽になるのだから、この位置は「いい位置」といえた。

 しかし、本人は若干不満顔。なぜならば、ヒート中のラップタイムが全然良くないのだ。「昨日楽勝に走っていた41秒前半のタイムが出てこない。FSAも走り込み、コースのグリップが上がって抵抗になっているのかも知れない。これじゃまずい。上位陣はラバーに慣れていて、いいタイムでラップしているから、決勝までに何とかしないと付いていけない」と感じていた。

 次のヒートはエア圧を若干下げ(コンマ05程度)シャシーを柔らかくして対策してみることにした。

 

 大島、まさかの「もらいクラッシュ!」

 さあ、いよいよFAの大島の出番だ。最下位からの追い上げが期待された。
 フォーメーションラップを2周行い、グリーンフラッグ!スタートだ。1〜2〜3コーナーをクリアーし、早くも2台オーバーテイクに成功する大島!「よし!順調だ!!」と思った瞬間だった、大島の8台程前のマシンが絡み合い、ストレートでスピン! ドライバーがマシンから飛び出したほどの勢いで、後続のマシンが次々と巻き込まれてコースを塞いでいく。そして、大島もその例外ではなく、除けようとしたマシン2台と共に巻き込まれ、コース外まで吹っ飛ばされる大クラッシュとなってしまった。 まさに「除けることが不可能な」クラッシュで、泣いても泣ききれない。

 カウル、シャフト破損、リアタイヤバーストでレース続行不可能。その場でリタイヤである。チームは破損したマシンの状況をその場で確認、レースが終了して大島が 戻ってくるまでには全てのパーツを取り寄せ、修復の準備を開始した。なにしろ、次の予選第2ヒートまでには時間がない。およそ30分後と考えられたので急ぐ必要があった。

 このクラッシュには布石があった。主催者のタイム計測システムが不調でスタートを随分待たされたのだ。暑い中、ヘルメットを被ったままダミーグリッドで長時間待たされたドライバー達が「熱中症」気味の状態になっていたことは十分に考えられる。このためかFAクラスのレースは荒れた。

 ヒートが終わり、大島が戻ってきた。すぐに修復に入るチームメンバー。そして、応援に来てくれていた人々、メーカーの関係者。多数の人々が大島を第2ヒートに出走させるべく手を貸してくれた。それもこれも、昨日の快走ぶりが素晴らしかったからだ。あの大島をもう一度見たかったのである。

☆大島選手のクラッシュの瞬間を収めた貴重なビデオを公開します。ファイルサイズが大きいので、ダウンロードに時間はかかると思いますが、よろしかったら見てください。 ダウンロード後、ファイルを保存し、コマ送りで見られることをお薦めします。

 大島直樹選手のクラッシュシーン


 

 予選第2ヒート

 「ボーッとしちゃった」澤田、順位を下げる。

 大島のクラッシュのショックから覚める間もなく、時間は冷酷にもやって来た。澤田の出走の時間だ。パーツの収集や、修復道具の手配などで走り回って息が切れているような状態だったが、時間だ。マシンを用意してダミーグリッドに向かう。

 しかしここでFAの時と同じように「長時間、なんのアナウンスもないまま待たされ」る事態になった。説明もないのでヘルメットも取れない。15分以上待たされた頃、エントラントが「冗談じゃない」と騒ぎだす。選手の状態を悪くするに決まっているからだ。20分近く時間が経過したころ、主催者が「一度マシンを下げて、ヘルメットも取ってよろしい」とアナウンス。各選手、頭に氷を当てたりして時間を過ごす。

 そしてスタート。11番手からの澤田は、一ケタ順位を狙うも「ペースが上がらない」。闘争心が全くなくなっていた。

 クラッシュのショック。長時間の待機。ボーッとしていたようだ。最終的には17番手くらいまで順位を下げてヒート2を終了。決勝のグリッドも14番手となった。

 

 「魂だけで走った」大島、まさかの結果に・・・

 さあ大島だ。最後尾からの予選第2ヒートである。
 スタートが切られ、ヒートが始まった。緊急修復されたマシンは間に合って、レースに参加できることになった大島だったが「みんなに感謝する気持ちで出走したけれど、もはや矢尽き刀折れ、気力だけで走ったけど、ペースは上がりませんでした」とのことで、最後尾のままヒートを終了。予想もしなかった予選落ちが決定したのであった。もっとも、このヒートで順位を「一ケタの前の方」まで上げなければ決勝進出はできなかったのだから、燃えてくるものがなかったのも致し方ないだろう。必勝体制で望んだ伊奈だったが、残念な結果になってしまった。

 後から考えると、タイムトライアルの時にトラブルが出たのが全てだろう。「ついていない」とはこのことだ。冷静になって考えてみると、タイトラの時の問題は「ガソリン」だったとしか思えない。フリー走行で不調が出たのはプラグが原因だったようだ。それを確定できないまま、いろいろと原因を探す間にガソリンの温度が上がり、調子を崩したとしか思えない。悔やんでも悔やみきれないのであった。


☆☆☆ 決勝レース ☆☆☆

 澤田だけとなった決勝レースだ。
 ICAクラスには予選落ちがない。参加人数が規定に満たないためだ。これは初参加の澤田には嬉しい事実だった。予選落ちがないということは「決勝までにゆっくりとマシンを仕上げる作戦も可能」ということ。実際、澤田も決勝に向けセットを検討しながら予選を戦ってきた。そして、全ての照準を合わせたレース、それが決勝なのだ。

 全日本選手権では、タイヤの使用本数が決まっている。「ワンセット+一本」である。何かトラブルが出たときに一本だけ交換してもいいですよ、という規定なのだが多くの選手が決勝レース前に最も消耗した一本を交換する。夏場のレースではタイヤの消耗が激しく、一本でも交換できることはしておくのが大切。パフォーマンス維持のために必須なのだ。ところが、澤田チームときたら「うっかり」このタイヤ交換を忘れてしまった。かなり暑さにやられていたとしか思えない。本来、澤田の走りからして右フロントタイヤを交換するべきだったのだが・・・・

 

 みんなに喜んでもらって嬉しいです・・・・

 さあ、決勝レースだ。
 このレースで前の方に行くために週末頑張ってきたのだ。行くぞ!の気分である。

 第2ヒートを「意気消沈して」終えたことは本人も自覚していたから「気合いを入れて」スタートに望む。スタート位置は14番手、7列目だ。

 スタートを切るとすぐに感じたことがあった「行ける!」である。トップグループに着いていける。スタート直後のごたごたを利して、順位をグンと上げることに成功!2周目突入時点で10番手だ。イケイケ!である。もう一台を3周ほどでオーバーテイク、9位だ。目標にしていたシングルについに入ってきた。しかも、5〜8位のグループが直前でもみ合っている。その隙を狙って最終コーナーでアタック!グループの先頭に立つことに成功!5位だ!! ところが立ち上がりのラインがキツキツで、ズボズボ抜かれ9位に逆戻り。難しい!さすがは全日本、バトルが面白いのだ!

 でも「行けた!」のもここまで。交換を忘れたフロントタイヤが悲鳴をあげ始めた。左回りのコースレイアウト、右フロントタイヤが終わると外周部分が遅くなって勝負にならないのであった。

 後半、下位から上がってきたランキング二位の松本選手とバトルして、最終コーナーから2コーナーまで「サイドバイサイド」でもみ合ってみたりしたけど、2コーナーの入りが大アンダーで勝負あった。しかもこのバトルでブレーキディスクを破損してしまい無理が利かなくなっておしまいであった。

 最終順位は10位。

 本人には5位くらいまでは眼中に見えていたので悔しさもあった。でも「北海道からの初参戦でポイント(11ポイント)をゲットしたのは素晴らしい!」と関係者に褒められて嬉しさもあった。複雑な心境であった。